都市設計特論第一、始まりました!

こんにちは、M2髙橋です。

朝夕の気温がぐっと寒くなり、いよいよ季節は冬を迎えようとしていますね。

東大のイチョウも徐々に鮮やかな黄色へと染まってきつつあります。

                            

さて、この秋から冬にかけては、西村先生が担当される大学院生向けの講義「都市設計特論第一」が開講されています。

                           

毎回、世界各国における都市計画の現状についてその国を研究されている先生方(大半の先生が研究室のOBです!)が講義をしてくださるという超豪華な内容になっています。

                           

       

以下は講義のスケジュールになります。(敬称略)

                            

1 10月22日(木)  イントロダクション  西村幸夫(東京大学)

2 11月5日(木)    フランス       鳥海基樹(首都大学東京)

3 11月9日(月)      イタリア                宮脇勝(名古屋大学)

4 11月19日(木)    オランダ        坪原紳二(跡見学園女子大学)

5 11月26日(木)    アメリカ(その1)     中島直人(東京大学)

6 12月3日(木)      アメリカ(その2)             黒瀬武史(東京大学)

7 12月10日(木)    日本                野原卓(横浜国立大学)

8 12月17日(木)    スペイン              阿部大輔(龍谷大学)

9 1月14日(木)      ドイツ          坂本英之(金沢美術大学)

10 1月18日(木)    イギリス            岡村祐(首都大学東京)

※講義場所は工学部14号館2Fの144教室を予定

                           

既に何度か講義が行われていますが、マガジン編集部では各回どのような内容だったのか、この場を借りて簡単に報告していきたいと思います。

                      

                           

           

                                                                           

                                                         

早速今回は先日行われた鳥海基樹先生による講義の様子をお伝えします。

鳥海先生は「フランスに於けるワイン用葡萄畑の景観保全に関する研究 一般的実態の整理とサン・テミリオン管轄区の事例分析」というタイトルで講義を行われました。

                                                         

ワインは言うまでもなくフランスを代表する名産品の1つですが、その原材料となる葡萄はフランスの農家の人々の手によって大切に手入れされており、非常に美しい景観を保っています。

                            

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▲フランス・サンテミリオンの美しい葡萄畑

(http://blog.livedoor.jp/bordeaux_france/archives/50081298.htmlより転載)

                                                                                                                                                                                                                               

                                                                                            

この葡萄畑はフランスにおける観光資源の1つとなっており、近年はその保全に関する研究が進められています。

                                           

他方でワインの生産面においては、近年フランスでは優良な品質の葡萄を用いてワインを製造し、その輸出によって外貨を得る「厚利少売」式のワイン生産が主流となっており、その結果採算性の低い葡萄畑では都市化が進み、逆に採算性の高い葡萄畑周辺では農地のスプロールが起こる問題が生じています。

                                            

日本で一般的にスプロールと言うと、非都市地域が無秩序に宅地化されてゆく状況を指しますが、フランスのそれは大きく事情が異なっています。

                                              

また景観の単純化や二次工作物の消失などの問題も生じており、

このような諸課題に対して、文化財保護や農業政策、そして都市計画など様々な観点から葡萄畑の景観保全の取り組みが進められています。

                                              

それは1999年に葡萄畑の文化的景観としての価値が評価されて世界遺産に登録されたサンテミリオン地域でも同様で、

ZPPAUPという文化財保護制度を利用した葡萄畑周辺の景観規制や、原産地統制呼称制度(AOC制度)による葡萄の木等に対する厳しい栽培既定、それに都市計画制度など多岐にわたる制度を活用しながら葡萄畑の景観保全が進められています。 

                                             

また、サンテミリオンではこれらの制度を運用するにあたって意思決定を支援する組織を構築するなどして生産者と自治体が積極的なコミュニケーションを図っています。

                                                                                         

また、葡萄畑との共存に配慮した「シャトー・シュヴァル・ブラン」などの非常に質の高い建築物が生み出されていることもサンテミリオンの特徴です。

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▲シャトー・シュヴァル・ブラン(http://www.old-vintage.com/chateau/31/3102_intro.htmlより転載)

                                                                                           

                                                                                                                                      

                                         

このようなサンテミリオンはじめフランスの景観保全では、それぞれ異なる文脈から生まれた諸制度が景観という総合的な課題に対して相互補完的な運用がなされ、それが有効に機能している点が特徴的だと言えます。

                                                                                            

一方、先生のお話の中で「合意形成の難しさなどがネックとなり、都市計画制度は現時点であまり有効に機能していない」とあり、実社会に有効な手段を提示することができる計画論の在り方とは何か、都市計画を学ぶ人間として改めて考えさせられました。

                                                

今回あったような景観の問題とそれに対する取り組みについては、比較的最近になりますが文化的景観といった概念や制度が構築され、徐々に浸透しつつある日本においても傾聴に値する論点が多くありました。

このような事例について更に積極的に国内でも議論する必要があるのだと思います。

                                                                                             

                                            貴重なお話を聞かせてくださった鳥海先生どうもありがとうございました。

第2回ではイタリアにおける都市計画の今日的トピックについて、名古屋大学の宮脇勝先生がお話をしてくださりました。

                                                       

次回もどうぞお楽しみに。